- Column -

ペットライン 猫ノート

Cat Note

【専門家監修】猫の老化って?ずっと快適に暮らしてもらうために、知っておきたい住まいと食事のこと

公開日:

猫ちゃんは年齢による見た目の変化が分かりにくいため、歳を忘れてしまいがちになりませんか。ずっと赤ちゃんのように思っていても、歳を重ねていくと老化はいつの間にか始まってしまうものです。猫の老化とはどのようなものなのでしょうか。また、ずっと快適に暮らしてもらうためにどうすれば良いのか解説します。

この記事の監修者

荒川 真希のイメージ画像

荒川 真希

ヤマザキ動物看護大学 動物臨床栄養教育学研究室
講師[愛玩動物看護師・ペット栄養管理士・VT・AHT・CDT・DGS]

pht_01.gif

猫の老化は何歳から始まるの?

猫ちゃんの年齢を人間の年齢に換算することは諸説ありますが、よく使われる方法の一つでは満2歳で人間の24歳程度に相当し、以降1年で人間のおよそ4年分の歳を取っていくと言われています。飼い猫の平均寿命は飼育環境など異なりますが、近年では室内飼育の場合15歳を超えています。老化の兆候は個体差があるため一概に何歳になったらということはありませんが、早ければ7歳くらいから、逆にいつまでたっても老化の兆候が見られないという場合も珍しくありません。

猫の老化の兆候って?

飼い主さんが最初に気づく猫ちゃんの老化のサインは、「あまり動かなくなって寝ている時間が長くなること」が多いようです。帰るといつも出迎えてくれていたのに出迎えてくれなくなったり、朝起きてこなかったり、なんとなく行動が鈍くなったりしたら、それは猫ちゃんの老化のサインかもしれません。
img01 (2).gif
猫ちゃんの老化は見た目にも表れてくることがあります。例えば、筋肉のハリがなくなり全体的に皮膚が下がったり、被毛の艶がなくなってパサついたり。また、毛繕いもあまりしなくなって若いときに比べて体が汚れがちになることも。食べ物の好みが変わったり、夜中に理由もなく大きな声で鳴いたり、トイレ以外の場所でおしっこやうんちなどの粗相をしてしまうこともあるようです。
老化のサインを見落とさないよう注意を払い、過ごしやすい環境を整えてあげることが大切です。

猫ちゃんの加齢に伴う行動の変化の一例です。愛猫にこういった変化がないか、見守ってあげましょう。
• 好奇心が弱くなり、周りのことを気にせず、行動が鈍くなる。
• ご飯とトイレ以外は寝ていることが多くなる。
• 自由に外出できる猫ちゃんの場合、外出が減る。
• 飼い主が外から戻った時、前は欠かさなかったお出迎えがなくなる。
• 食べ物の嗜好が変わり、好き嫌いがはっきりしてくる。
• トイレ以外の場所でうんちやおしっこをする。
• 大きな声で鳴く。
• 被毛全体がぺったりしたり、毛並みに割れ目ができたりしてくる。
• 身体にハリがなくなってお腹にたるみが出てくる。
• 毛繕いをあまりしなくなる。etc

シニアになるとかかりやすい病気

pht_02.gif
ここでは老化によって発症しやすい病気を紹介します。

腎臓機能の低下

老猫の多くが発症しやすいのが腎臓の病気です。
腎臓の働きの75%が失われると、尿量が増える、お水をたくさん飲むようになるなどの症状が表れてきます。病気が進行すると尿として排出されるべき老廃物が体内に蓄積しはじめ、食欲がなくなる、口内炎ができる、よく吐く、口臭が出るようになる、貧血を起こす、寝ている時間が増える、痩せてくるなどが起こることがあります。腎臓の病気は不可逆的なため、こうしたちょっとした症状に少しでも早く気づいてあげることがとても大切です。

腫瘍

高齢になると腫瘍疾患の発生が増えてきます。猫ちゃんはリンパ腫や乳腺腫瘍、皮膚腫瘍が多い傾向にあります。皮膚や乳腺の腫瘍は体の表面にできることが多いため、日頃から全身を触って、しこりがないかなどを気にしてあげてください。

骨や関節の病気

人間と同じように猫ちゃんも歳を取ると筋肉、骨格、関節が弱ってきます。高い場所へ飛び乗ったり、また飛び降りたりといった関節に負担が大きい動作をしなくてもいい生活環境を整えてあげてください。

心臓病

猫ちゃんは心臓の筋肉が厚くなることで心臓のポンプ機能が落ちてしまう肥大型心筋症の発生が多いとされています。この状態になると肺や胸に水が溜まりやすくなる、また血栓ができやすい状態となるため、血管が詰まってしまうことがあります。

ホルモン系の疾患

甲状腺機能亢進症や糖尿病といったホルモン異常を原因とする病気がみられるようになります。

便秘や尿石症

脱水や運動量の低下によって腸の働きが悪くなり、便秘になりやすくなります。また、頻繁にトイレに行く、またおしっこをうまく出せないような時は、膀胱や尿道になんらかの問題が起きていることもあるので、トイレのチェックは必ず毎日行いましょう。特にオス猫は尿道が細く、結石が詰まりやすいため、日頃のトイレの様子を確認し、定期的に検査を受けることをおすすめします。

歯周病や口腔の病気

歯や口の中の状態が悪くなると、痛みでご飯を食べなくなることがあります。歯周病を放置しておくと歯の根元の病巣が広がり、歯が自然脱落することがあります。また、猫の場合は口内炎が起こることも多いので口の中のケアも忘れないようにしてあげてください。

長生き猫ちゃんに優しい住環境とは?

猫ちゃんの老化を感じはじめたら、少しでも快適な環境を用意してあげることが大切です。飼い主さんのほんのちょっとの気遣いで、長生き猫ちゃんを労わってあげることができます。

寝る場所やトイレなどを再チェック!

img01 (1).gif猫ちゃんは歳を重ねるにつれ寝ていることが多くなるので、まずは誰にも邪魔されずにゆっくり寝ることができる場所を確保してあげましょう。冬は暖かい場所に、夏は涼しい場所に、愛猫の好みの寝床を用意してあげてください。
猫ちゃんは住環境のうち特にトイレの位置を気にすることが多いので、落ち着く場所を選んであげてください。トイレは健康のバロメーターになるので、回数は増えていないか、おしっこの量は増えていないかなど、こまめにチェックしてあげることも大切です。いつもと変わった様子があれば、早め獣医師に診察してもらいましょう。
特に体調に変化が見られなくとも、最低1年に1~2度は、健康診断を兼ねて動物病院を受診できると良いですね。

無理のない程度に運動も

動くのがおっくうな様子なら、食器や水入れ、トイレなどは複数用意して、必要な時にすぐ用を足せるようしてあげてください。トイレに入るのが大変そうだったら、縁の浅いトイレに変えても良いでしょう。
ただし、屋内だけで暮らしている猫ちゃんは、運動不足になりがちなので1日10分1~2回くらい遊んであげることも大切な健康管理のひとつです。

pht_05_2.gif

長生き猫ちゃんにやさしい食事とは?

img01.png健康維持のためには、食事にも気遣ってあげることも重要です。
近年のペットフードは、シニア期の猫ちゃんのために配慮されたものも多いので、それらを上手に活用すると良いでしょう。

水分不足に関しては、新鮮な水がいつでも飲めるよう、猫ちゃんが好きな場所に設置すると良いでしょう。ただし、喉の渇きに鈍感になってあまり水を飲まなくなる猫ちゃんもいますので、きちんと猫ちゃんが水分補給をしているか配慮は怠らないようにしましょう。また、ウェットフードを上手に取り入れたり、いつものドライフードをぬるま湯や薄いスープでふやかしてあげたりするのもおすすめです。

年齢に合った食事を選んで、いつまでも元気に!

シニアの猫ちゃんでも、年齢によって必要な栄養は変わってきます。年齢はあくまでも目安ですので、猫ちゃんの状態に応じてフードを選んでください。

●体の機能が低下し始める頃(7~10歳位)

成猫期と変わらず元気そうで、かつ食欲は以前と同じでも、活動量が低下し消費するカロリーが減ることから太りやすくなりがちです。そのため成猫期と比べて、摂取カロリーを控えめにする必要があります。

●老化が気になってくる頃(11歳~14歳位)

腎機能や心機能に関わるミネラルやタンパク質、シニア期に不足しがちな抗酸化物質であるビタミンCやビタミンE、便秘対策として腸の働きを助ける食物繊維、また美しい皮膚・被毛を維持するためにはオメガ3系・6系脂肪酸などがバランス良く配合されているフードを選ぶのも良いでしょう。

●平均寿命(15歳位)以上になったら

食欲や消化能力が低下して痩せやすい猫ちゃんが多くなります。消化が良く、少量で十分な栄養が摂れるフードが最適です。もちろん、十分な水分補給ができるよう配慮してあげましょう。

あわせて読みたい記事

SNS公式アカウント