【獣医師監修】愛犬の認知症にそなえよう
愛犬がシニア期をむかえてから夜鳴きをしたり、排泄(トイレ)を失敗したりと、これまでとは違う行動が見られる場合、それは認知症かもしれません。認知症は徐々に進行するため気づきにくく、認知症を完全に治療する方法はありません。そのため、シニア期をむかえる前からのそなえがとても大切です。
この記事の監修者
小澤 真希子
獣医師/日本大学 生物資源科学部 獣医保健看護学科 専任講師
東京大学農学部獣医学科卒業、東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了、動物病院勤務を経て現職。犬と猫の認知症研究に取り組んでいる。博士(獣医学)。獣医行動診療科認定医。
「認知症」ってなに?
認知症とは、脳の病気や障害などの原因により、認知機能が低下して、日常生活に支障がでてくる状態を表す言葉です。 犬にも認知症はあり、加齢による脳の老化が日常生活に支障をきたすような事例が確認されています。 認知機能の低下に伴う行動の変化は、犬が10歳を超える頃から見られるようになり、13歳を超えるとさらに増加し、15~17歳では急増する傾向にあります。
認知症チェックリスト
認知症と運動機能の低下についての質問リストです。「いくつチェックがつけば認知症」というものではありません。しかし、生活環境の変化などがないのにチェックの数が増えてくると認知症やその他の病気の可能性が考えられます。
愛犬に次のような行動が見られないかをチェックし、認知症にそなえましょう。
□ 夜鳴きをする
□ 昼夜が逆転する
□ 眠る時間が増え、活動性が低下する
□ 動きたがらない、遊びたがらない
□ 歩き方がおぼつかなくなる
□ 階段や段差の上り下りが困難である
□ 狭い場所にはまる、物をよけることができない
□ 飼い主さんとの関わり合いが変わったり、減ったりしている
□ 視覚刺激、聴覚刺激に対する反応が乏しい
□ 同じ場所を歩き続ける
□ 排泄の失敗がある
□ 名前を呼んでも以前より反応が乏しい
□ 以前はできていたしつけができなくなった
□ ぼんやりしている時間が増えた
□ 家の中やいつもの散歩コースで迷子になる
□ 以前は平気だったことを怖がったり、怒ったりする
認知症の予防につながる3つのそなえ
現時点では、犬の認知症を完全に予防する方法は分かっていませんが、次の3つを生活に取り入れてそなえましょう。
- 年齢に合った食事でそなえる
認知症の予防には毎日の食事が重要です。年齢により必要な栄養素は異なりますので、年齢に合った食事を選びましょう。また、シニア期になったら脳機能に良いEPA・DHAといったオメガ3不飽和脂肪酸を積極的にとり入れ、他にもオメガ6不飽和脂肪酸や、老化予防効果のあるポリフェノール・ビタミンC・ビタミンEをとり入れましょう。 - 適度な運動でそなえる
運動は脳と身体の老化の進行を遅らせる効果があります。筋力を高め寝たきりを予防する効果も期待されます。毎日の散歩は脳へ刺激を与えて、肥満対策にもなります。シニア期や肥満になると犬が散歩に行きたがらない ことがあるため、今から毎日の散歩を習慣づけましょう。 - 頭を使った遊びでそなえる
犬は加齢と共に周囲への興味や好奇心が減り、生活が単調になりやすい傾向があります。「オテ」「オスワリ」などの日常で行うコマンドの他にも、「チョウダイ」「マワル」などの新しいコマンドにも挑戦してみましょう。また、おもちゃやおやつを探すゲームは脳に刺激を与え、室内での運動にもなりますので、ぜひとり入れてみましょう。
愛犬がヒマな時間を作らないように生活や遊びを工夫してあげましょう。
生活環境の改善、栄養面の向上、獣医療技術と設備の進化などを背景に、ペットの長寿化が進んでいます。この変化に伴い、関節の痛み、筋肉の衰え、腎臓機能や認知機能の低下など、加齢に伴う疾患や機能低下も見られるようになりました。この現状を背景に、ペットフードメーカーであるペットライン株式会社では、シニア期にそなえてわんちゃん・ねこちゃんの生活環境や食事の内容を見直し、変化を見逃さないようにすること、飼い主さんも正しい知識を身につけることが大切だと考え「いぬとねこ シニアのそなえプロジェクト」を発足しました。
このプロジェクトをきっかけに、皆さんで一緒に「シニアのそなえ」について考えていきましょう。